【最終兵器彼女】

評価:★★★☆☆
 主演の前田亜季に免じて、星を追加。
 酷い映画である。作品自体の出来ではなく、設定上の事である。原作の頃から説明不足だったが。テレビアニメ→映画と進むに従い、それが顕著になっている。
 なぜ、ちせが最終兵器に改造されたのか、その改造素材の選定基準はなんなのか?。それ以前に発覚すればいろんな影響が在るであろうこの計画を発動させる原因とはなんなのか?。前後するが、ちせを改造した組織と自衛隊との関係は?。とか、一応創作活動を行っている(事になっている)者として、疑問が出てくる。
 まあ、そういうことを問うてはいけないかもしれないが……。
 いや実は、“彼女が最終兵器になってしまった”のではなく、“最終兵器が彼女になってしまった”ということなら、ある程度納得はできる。

《殲滅戦闘機械人“ちせ”》

 実は、彼女は最初から戦闘用アンドロイドとして開発されていた。実は敵性地に民間人として潜入、作戦発動の際には内装されてる装備を発現駆使し、殲滅するという最終兵器であった。その外見は、警戒心を全く呼び起こさない、小柄な愛らしい少女のものとし、以前にテロに遭い死亡した、技術陣の1人の娘“ちせ”をモデルにした。アンドロイドの人格その他は、“ちせ”をモデルにし、記憶も偽造した物である(瀕死状態で摘出された“ちせ”の脳を移植ということでも良いか)
 実写映画版では、ちせの家族の描写が無いため、このように設定しても問題はないだろう。それに、最初は人間だったよりも、最初から最終兵器で全ては偽装だったのほうが、より悲劇性がますと思う。
 敵の設定――戦争の原因も、作中では謎のまま、ちせ建造が戦争の遠因となったと示唆するにとどめているが。これも、ではそもそも ちせ はなぜ造られたのか根本的な謎が残る。いくら国土防衛のためとか進化する兵器とはいえ、あれは大袈裟すぎる。
 これもこのように理由付ければいいと思う。
 実は、別種の機械生命体のような物*1の残骸がその昔、日本の某所*2で発見された。その残骸の解析結果やその他の物から、それらが近い将来再度地球に来襲することが判明した。それも対抗できるのは、同じテクノロジーで造られた兵器だけ。そして、ちせが建造された。しかし、本来の敵の来襲よりも先に、ちせのテクノロジーを驚異と感じた陣営が、ちせを奪取または抹消しようと戦争を仕掛けてくる。
 札幌が最初に攻撃されたのは、情報操作の結果である。本来の拠点である小樽に比較的近い札幌を攻撃させ、そこにちせを出撃させたことにより、ちせ開発の根拠地がそこであると撹乱させることに成功した。
 大体、異世界の技術的干渉を考慮でもしないと、ちせとそれ以外の兵器体系に差が在りすぎる。ちせが異質すぎる。あれがムラセ以下の技術陣だけで建造されていたとするならば、ちせ開発の副産物(自己増殖形の兵器とか、異常な飛行性能を備えた戦闘機とか)が、少なくとも自衛隊の装備に反映されているか、そうでないにしてもそれを示唆する描写(コストや技術的な問題が解決できずに、採用は見送られたとか)が在って良いはずだ。
 
 そりゃあ、設定を考えすぎて話がおろそかになるのは論外*3としても。設定と話が密接に絡み合っているはずの、言い換えれば設定の謎が話に密接に関わっているこの種の作品で、肝心の設定が考えられていないのはやはり問題であろう。
 というか、主演が前田亜季でなかったら、俺は観に行かなかった。でも、ある意味恐ろしい女優だなあ、彼女は。撮影時で19歳と10ヶ月のくせに、小柄な高校生役がものの見事にはまっている。5年以上前の【バトルロワイアル】の頃からほとんど外見が変わっていないというのがすごい。第二の池脇千鶴にはなれるだろう(もうなってるか)

*1:わかりやすくいえば、STのボーグ集合体

*2:小樽でもよし

*3:俺もその1人だ